振込金受取書を利用した不正
 電気、水道、ガス、電話の料金、あるいは家賃や新聞代まで銀行振り込みですます時代である。
通常のビジネスも銀行を通じた支払が多い。銀行振り込みをしたときにもらうのが、振込金受取書。
これも領収書として扱われている。

 ところが、この振込金受取書は、あくまでも銀行を通じて指定の口座に振り込んだことを証明するだけのもの。
相手先が発行した領収書ではない。
 だから、その仕組みを利用して、あたかも取引先に支払ったかのように見せる悪徳社員が現われる。

悪徳社員の例
 佐貫徳三さんは広告代理店の経理部長。
勤続30年のベテランである。そんな佐貫さんを恐れて、だれもヘタな小細工をしたがらない。
しかし、半年前に他の広告代理店から引き抜かれた矢吹純一は、経理部長の鋭い目に気付かなかった。

 広告業界は複雑な世界である。わけのわからない出費もざらだ。
 そこに目を付けた矢吹は、架空の銀行口座を設けた。

銀行口座は、三文判さえあれば、だれでもつくれる。矢吹は、いかにも実在しているかのような会社を数社デッチ上げたのである。
そして、"幽霊会社"からの請求書を捏造し、経理に提出した。経理が指定された口座に金を振り込む。
早い話が、矢吹の"ダミー会社"に振り込んだわけである。
これが何回となく続いた時、佐貫さんは、矢吹関係の振込金受取書が他の社員に比べて異様に多いことに気付いた。

 「何かあるな」
 ベテラン経理マンの臭覚が、不正の臭いを嗅ぎつけたのである。
内密の調査がおこなわれた結果、矢吹の"幽霊会社"の存在が明らかになった。

銀行の架空口座を通じて、300万円もの金を横領していたのである。
 もちろん矢吹は会社を解雇された。
領収書扱いされている振込金受取書の盲点をついた犯罪の結末である。
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