特別地方消費税にも光る経理の目
 某出版社はバブル崩壊の影響もあってか、このところ、経費の締め付けが厳しい。
経理のおじさんは連日のように、編集部に顔を出しては、だれかをつかまえ、
「ひとり5000円を越えると、取材費ではなく交際費になってしまうから注意してください」などと、ふれまわっている。

 編集部には、そんなことは無頓着な人が多いものだが、経理のおじさんの努力のかいがあってか、最近では、経費の使い方に気を配る部員が徐々にだが増える傾向にあった。

そんな折り、中堅社員の大野昭彦さんは同僚とついハメをはずし、一軒で3万円ほど使ってしまった。
 領収書の明細にはこうあった。

 税抜き金額=2万8500円
 消費税額=855円
 特別地方消費税=855円

ウソは絶対バレる
 「こんな時代だもんな。二人でこれだけ使うとまずいかもしれない」
 そう考えた大野さんだが、かといって自腹を切る気はさらさらない。
 「そうだ、6人で打ち合わせしたことにすればいいんだ。そうすればひとり頭5000円ちょいだから、取材費で落ちるはずだ」
で、大野さん、精算書の明細欄に、もっともらしい理由をつけて、ごていねいにも6名の名前を書きこんだ。

 「これで一件落着よ」
 ところが大野さんは、経理のおじさんから呼び出しを受けた。
 「大野君、人数の水増しをしたでしょう。本当はせいぜい3人じゃないですか」
 「はあ?」
 大野さんは、さては経理のおっさん、オレが飲んでいるときにおなじ店にきていたのかしらん、と考えたりしたがそうではない。

謎解きは、「地方特別消費税」にある。
じつはこの税金、ひとり当たり7500円以上使った場合にのみかかってくるのだ。
 つまり、大野さんが本当に6人で飲食をしたのなら、税抜き価格はひとり4750円となり、特別地方消費税は発生しないことになる。

 なまじのインチキは通用しない好例である。
領収書コンテンツ
inserted by FC2 system